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俳優に求められる演技の上手さよりも大切な視点とは?

映画『Mothers』インタビュー 写真:山本海里
--難波さんは、監督を務めるにあたって、何か俳優さんとのコミュニケーションで苦労されることはあったのでしょうか?
難波さん:今回は、オーディションを行わず、以前から仕事を共にしてきた「この人とやりたい」と思える俳優たちに声をかける形でキャスティングを行いました。
なので現場では、互いの芝居への信頼感が自然と築かれていて、作品との相性や表現力についても、ある程度の確信を持って臨めていたと思います。
演出面でも行き違いなどはほとんどなく、「もう少し距離感を調整したい」といったシンプルなやり取りだけで十分に通じ合えました。
仮に想像していた情景と異なる表現が生まれたとしても、それを面白がれる関係性だったので、細かく修正を重ねる必要はありませんでした。
信頼する俳優たちとともに作品を作れたことは、今回の現場において何より楽しく、充実した経験だったと感じています。
--演技が上手いだけではなく、やはり仕事をする相手としての信頼関係は大事だと思います。
難波さん:そうですね。映画づくりは、演技力だけで成り立つものではないと、以前から感じてきましたので。仕事としてだけでなく、ひとつの作品を共に作る以上、「この人と一緒にやりたい」と心から思えることが何より大切だと思っています。
脚本家として現場に関わってきた頃から、常に「この人と作品を作りたい」という思いを積み重ねてきました。
そうした信頼の延長線上で、今回あらためて信頼できる人たちと現場を共にできたことは、本当に良かったと感じています。
「待つだけじゃない」俳優で大切にしたい生き方とは?

オムニバス映画『Mothers』インタビュー 写真:山本海里
――俳優や脚本家は、多くの場合、不安を抱えながら活動していると思います。経済的なこと、オーディションに落ち続ける日々、将来への迷いなど、模索しながら進んでいる人も少なくありません。
そうした現実を踏まえたうえで、脚本家の視点から見て、「俳優はこうしたほうがいいのでは」と感じる点や、「こういう俳優がいたら面白い」と思う人物像があれば、ぜひお聞かせください。
難波さん:脚本家も俳優も、努力を重ねて実力があっても、なかなかチャンスに恵まれない人が多いという点ではとても似ていると感じています。俳優からは「オーディションに通らない」「書類選考すら難しい」といった声をよく聞きますし、脚本家にも同じ構造がありますね。
大きなシナリオコンクールでは、1000〜1500本の応募作の中から最終選考に入らなければ評価されず、デビューに至るのはごくわずかです。
5年、10年と一人で黙々と書き続ける中で、心が折れてしまう人も少なくありません。それでも続けるためには、たとえ理想の仕事でなくても、「形になる仕事」を一つずつ積み重ねる経験が大切ではないでしょうか。
これは俳優も同じで、本当は連続ドラマや映画に出たいという思いがあっても、自主制作作品などを含め、できるだけ多くの現場に参加してほしい。
そうすることで、私たち作り手は実際の芝居を見ることができ、選択肢が広がります。
インディペンデント映画の動きが活発になっている今こそ、俳優も脚本家も、自分たちからアクションを起こし、リスクを抑えながら一緒に作品を作っていける関係が増えていけばいい。そんな環境が広がれば、とても素敵ですね。
--実際、俳優として活動をする史織さんはいかがですか?
史織さん:俳優も、ただチャンスを待つだけではなく、自ら動いていくことが大切だと改めて感じています。
私自身、作品を作りたいという思いはありながらも、なかなか最初の一歩を踏み出せなかった人です。他にも「脚本を書くのは難しそうだ」って立ち止まってしまう人もとても多いと思います。
それでも、何かを始めれば、必ず見てくれる人はいる。その過程は決して無駄にはならず、一つの作品を作ることで、作り手の気持ちや、撮る側の視点など、これまで見えていなかったことも自然と理解できたらいいですね。
俳優であっても、自分たちでアクションを起こし、何か一つを作り上げる経験は、純粋に楽しく、そして大きな意味を持つものになるはず。そうした積み重ねこそが、次につながっていくのだと思います。

オムニバス映画『Mothers』インタビュー 写真:山本海里
--今回のプロジェクトを踏まえて、難波さんの今後の展望について教えてください。
難波さん:今回、脚本家主導でオムニバス映画『mothers マザーズ』を公開できたことは、大きな経験になりました。その実績を踏まえ、次はさらにステップアップした形として、長編映画に挑戦したいと考えています。
現在は、約1,000万円規模の資金調達を目標に、劇場公開、そして海外にも届けることを視野に入れた新プロジェクトを立ち上げました。映画のタイトルは『円盤』です。これまでの経験を土台に、より大きなスケールでアクションを起こしていきたいと思っています。
――一度映画プロジェクトの試行錯誤を経験したことで、次に生かせる手応えも見えてきたんですね。
難波さん:そうですね。多くの人に支えられて一本の映画を完成させた経験は、確実に次につながっています。その積み重ねが、今の取り組みを後押ししてくれていると感じています。
脚本家が主導し、仲間とともに一歩ずつ形にしてきた『Mothers マザーズ』。その挑戦と想いは、作品の随所に確かに刻まれている。
そんな本作は、2026年1月30日より『Prime Video』『U-NEXT』にて配信されている。
日常の隙間に、そっと寄り添う映画として、多くの人に届くことを願いたい。
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