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インタビュー

他人事じゃない人生がそこにある…映画『枯れ木に銃弾』主演・田所ちさ単独インタビュー! 貫き通した何も起こさない心の強さとは

75歳の司慎一郎監督が長編初監督・脚本を手がけ、現代日本に生きる高齢者たちの視点で描いたシニアノワール映画『枯れ木に銃弾』

ミニシアター映画館で7日間連続で満席と、今話題を呼んでいる作品だ。そのような作品で主演を務めたのが俳優・田所ちさである。

田所自身も長編映画初主演を務め、5日間という短期集中撮影で臨んだ本作。撮影に挑むまでの日々や現場で生まれた夫婦の空気感など、インタビューを通じて語ってもらった。

――映画『枯れ木に銃弾』を拝見させていただきました。社会に問いかけたいテーマがはっきり描かれており、かつ少しコミカルに描かれている部分もあり、そのバランスが非常によかったなと思いました。

監督がやりたいことが前面に出た映画だったなと思っています。だからこそ俳優部は、その実現したいことを一緒に夢中になって作っていったなと。特に、そう言われたわけではないのですが、おそらく全員がその監督の熱意を受け取っていたのではないかと思います。

映画『枯れ木に銃弾』 場面写真


――作品への出演が決まったときの心境はどうでしたか?

私は今回オーディションでの起用でした。役の設定が62歳なのですが、オーディション時点ではさらに上の設定だったんですよね。なので、自分より20歳以上も歳上の役が来たので、正直「自分じゃないな…」「これいけるかな…?」と思っていました。それでも、他の役で決まる可能性を信じてオーディションを受けたらあかね役で決まったんです。

決まった瞬間はもちろん嬉しかったですね。めちゃくちゃ嬉しい(笑)。それでも、やはり自分より全然年齢が上の役なので不安はよぎりましたね。

周りの方はとても喜んでくれていて、その気持ちに乗っかりたかったのですが「見えるかな」「夫婦に見えるかな」というプレッシャーの方が大きかったです。あとは、長編の主演は初めてだったので、そのドキドキもありましたね。

田所ちさ 写真:ショコラスタジオ


――今回の作品が『現代という時代の中で取り残された高齢者』をテーマにしていました。初めて台本を読んだときや、作品のテーマについてはどう思われましたか?

この作品を描く起点となった出来事が『監督がお店で実際に経験したこと』となっており、特に作中で描かれるコンビニで起こるシーンのようなことが実際にあったようなんです。監督としては本当に嫌な思いをしたようで、その怒りもあってこの作品を作ろうと思ったと聞いています。

監督は、雰囲気の柔らかいおしゃべり好きのおじいちゃんのような感じの方なのですが、作品には深い熱と怒りがこもっていて。

そのような方が「今の社会は老人に優しくない」と感じている姿を目の当たりにして、深く感じるものはありましたね。

監督の深いテーマに共感させられた時には「作品を通して強く訴えたい」と思いました。ただ、私が演じたあかねは怒るシーンがないんですよね。喜一郎(演:鷲田五郎)は怒っていますが、私はずっと振り回されている。だから役として答えを出さずに、その時々に感じるものが正解かなと思っていました。


――本作を演じるに当たっての役作りまでに取り組んだことや大切にされたことなどはありますでしょうか?

実は出演が決まってから制作の都合で2度もリスケになってしまって…脚本はいただいたんですが「もしかしたら流れてしまうのでは?」という不安は常にありましたね。ただ、監督のやりたいものを体現する覚悟があったので「いつ何が来てもやります!」という気持ちはありました。

現場では、とにかく「そこで会話をする」「そこにいる」ということを意識しようと思いました。

俳優って何かやろうとしてしまいがちじゃないですか。でも今回は、それをしないことを意識しました。

若い俳優さんたちも、スタッフさんたちも、良い人たちばかりで、「あなたたちのしたいようにしてください、私たちはここで見てます」というスタイルを現場で感じて。

だから私がバタバタしなければいい、そこにいてくれれば皆さんは信じてやらせてくれる、それが初めての主演の役割なのかもしれないと思いました。

映画『枯れ木に銃弾』 場面写真


――たくあんを食べるシーンも含め、冒頭の夫婦の雰囲気がすごく印象的でした。夫婦役を演じる鷲田さんとの関係性で意識したことはありましたか?

それは良く聞かれるのですが、逆に何も意識しなかったんです。本読みで初めて会ったとき、「あ、喜一郎さんだ」と思ったのを覚えています。

何もせずして喜一郎さんがそこにいると感じたので、関係性を作るというよりも「ちゃんと会話しよう」って思ったぐらいです。

振り返ると「鷲田さんを人として信じている」という感覚でした。長い夫婦ってフレッシュな会話は必要なくて、『信じてそこにいる』『空間を共にする』ことが大切なのではないかと。

映画『枯れ木に銃弾』 場面写真

――刑事を殺してしまった後、田所さん演じるあかねの目が一気に変わったなと感じました。あの辺りの心境はいかがでしたか?

覚悟を決めた、ということだと思います。もう他人事じゃなくなって、自分事になった。この人と心中する覚悟というか、やってしまったことを一緒に受け入れるという気持ち。それと、あの場面で喜一郎さんが弱った瞬間があって、「守らなきゃいけない」という意識が芽生えた。その二つがスイッチになって、目が変わったんだと思います。

――特にお蕎麦のシーンはすごく印象的な場面でした。あの場面でも役として何か吹っ切れた感じがあったのでしょうか?

あのシーンで、あかねが初めて泣くんですよね。笑うって一番感情が解放されて緩む瞬間じゃないですか。だから「やっと泣けた」というか、やっと自分の感情が入ってきた瞬間だったと思います。それまでは緊張感というか、わけがわからない状態を抜け出せていなかった。やっと解放されたんだと思います。

今回のあかねという役は、今までの役作りとちょっと違って、その時の気持ちを本当に大事にしようと思っていて。鷲田さんと会話をしようとずっと思っていたのも同じで、言葉を返すことだけを考えていた。だからあの解放も、自然に生まれたものだったと思います。

田所ちさ 写真:ショコラスタジオ

――映画『枯れ木に銃弾』公開後の反響はありますか?

7日間連続満席だったんですよ。私も初主演、監督も長編初監督作品という初めてずくめだったのに衝撃でした

特に嬉しかったのは、映画館に長い間来ていなかった方がたくさん来てくれたことです。「何十年ぶりに来ました」「頑張ってきてよかったです」という声をいただいて。あなたと話すと元気が出ます」と拝まれた方もいて(笑)。映画館に来てほしいと思って活動をしている部分もあるので、それが一番嬉しかったですね。

――最後に、本作を見る方に届けたいメッセージをお願いします。

ファンタジーと言えばファンタジーかもしれないけれど、私は『少し怖い、自分の未来の話』だと思うんです。本当に手の先にあることだと思うので、それを感じてほしい。そして、映画の中に出てくる若者たちに悪気はないんですよ。仕事を頑張っているだけ。年配の方にも、あの若者たちの目線で見てほしいし、若い方にもあの老夫婦の側から想像してほしい。どちらの気持ちも想像してほしいなと思います。

上映時間も1時間ちょっとなので、久しぶりに映画館に行こうかなという方にもぜひ。
『他人事じゃない人生がそこにある』ということを感じてもらえたら嬉しいです。

映画『枯れ木に銃弾』 ポスター

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