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第1弾 外山史織 × 鈴田修也-『演技がわからない俳優は何者なのか?』
俳優同士が台本なしで語り合う企画『Off Script Actors』。普段はなかなか表に出ることのない、俳優それぞれの事情や価値観、生き方に焦点を当てていく対談シリーズだ。
記念すべき第1回に登場するのは、俳優・外山史織。俳優であり本企画の聞き手でもある筆者・Shuyaと、「俳優としての在り方」をテーマに率直な言葉を交わした。
近年、日本のエンタメ業界では、俳優という職業の境界線が曖昧になりつつある。表現の幅が広がる一方で、求められる姿も多様化し、現場は目まぐるしく変化している。
そんな環境の中で、同じ俳優として何を考え、どう立ち続けているのか。対話の中から、飾らない本音が浮かび上がってきた。
華やかなイメージで語られがちなエンタメ業界だが、その裏側には葛藤や迷いも確かに存在する。本企画を通して、そうした「俳優のリアル」を少しでも感じ取ってもらえたら嬉しい。
俳優も何かわからない『演技』
Shuya:
今回の『Off Script Actors』では、昨今の俳優の在り方について話していきたいと思いますが、史織さんは俳優を始めた頃はどうしたらいいのかわからなかったですか?
史織:
そうですね。俳優になるには、事務所に入るしか道はないという考えでしたし、演技についても、感覚が頼りで、どうしたらいいか分からなかったです。
Shuya:
いや、一緒です。
史織:
そうですよね。俳優を始めようと考えた時に、真っ先に「事務所どうしよう」としか浮かばなかったです。
Shuya:
私も一緒ですね。最初は、良い事務所に入ることばかり考えていたのですが、今は全然考えが変わりましたね。今となっては、そもそも何が良い事務所なのかもわからないのですが。笑
演技もスポーツと一緒で基礎的な練習があって、しっかりしたアプローチの仕方というものがあるわけじゃないですか。
それが、もちろん海外では主流ですけど、日本はやはり先に事務所を探すという考えの人が多いと思いませんか?
史織:
私もそうでしたけど、そもそも、演技にアプローチの仕方があること自体知らなかったですね。
Shuya:
私も俳優を始めた当初は、有名になりたいという思いが強かったし、俳優としてどうありたいかという明確な理想は、正直なところあまり持っていなかったですね。
どちらかというと、俳優を目指すと決めた頃は、「有名な映画・ドラマに出演して、活動してる感出したい」という気持ちが先行してたかもしれないです。
もちろん今でも「売れたい気持ち」はありますよ。でも、それよりも大切なことが俳優をやっていく上ではあったなと。
史織:
確かに。私もそれはすごく同感です。なぜそのように考えが変わったんですか?
Shuya:
今思うと「売れたい!」はすごく表面上な思いな気がしますね。自分の心のなかで「なぜ俳優をやっているのか?」を探す過程で気づくことがたくさんあったのだと思います。「あれ、野球みたいに俳優の練習法ってなくない?」「お金払って出演するのおかしくない?」「どこで俳優を勉強するんだろう」「なんで売れることに焦っているのだろう?」などですかね。
当初、出会った周りの俳優たちも演技をすごく感覚でやっていて。「自分はこんなことしたくないのに…」「なんでこんな感覚で満足してるんだろう?」という心の中のノッキングが多かったです。
史織:
やっぱり知ることって大事ですよね。わからなかったら、とりあえず自分の感覚に頼りがちですけど、感覚だからこそ、再現性もないから当時はとても苦しくて。
なんでも筋道を立てて考えることが大事だなと、演技のレッスンを通して、その考え方を身につけた気がしますね。ここまでわかりやすく明確にできるんだ、というか。
見えないプロの俳優としての境目
Shuya:
どうしたらいいのかわからない点に関して言うと、「明日から俳優をやろう」と思い立って、周りから「何をしているの?」と聞かれたときも、とりあえず「俳優です」と答えてはいたものの、本当に自分は俳優と言っていいのだろうか、と迷うことが何度もありました。
特に日本は、その境界線がすごく曖昧ですよね。「俳優なのか」「俳優志望なのか」、自分でもどこに立っているのかわからなくなる時期がありました。きっと、同じように悩んだ経験がある人は少なくないんじゃないかと思います。
史織:
俳優ですっていうと、俳優さんの卵ねって言われることないですか?
Shuya:
いやいや卵って! それでどこからがプロ?みたいな感覚ですね。
史織:
プロの俳優としてレッスンを受けて、現場にも行っている。でも世間から見ると、まだ表に出ていない人は「卵」みたいな言われ方もしますよね。それがどうしても悔しくて、引っかかることもあります。
Shuya:
どこから「私は俳優です」と言えるようになるのかは、結構、自分次第のところもあるんじゃないですか?
史織:
それは本当にあると思います。私は覚悟を決めた段階で、「俳優です」と言うようにしています。「何をしているの?」と聞かれたら、迷わずそう答える。それは、もうやると決めた、という自分なりの覚悟を見せる意味も込めて。
もちろん、「卵なんだね」と言われることは今でもあります。業界の人に言われることはあまりないですが、業界の外の人に話すと「まだ卵なんだね」と言われることは、やっぱりありますね。
自分は何者なのか?
Shuya:
結局、俳優って「どうやったら俳優になれるのか」「どう活動していけばいいのか」が分からなくなる瞬間が必ずあると思うんです。そうなったとき、周りの人を頼って何かを始めるしかない、というのはすごく明らかだなと感じています。
その一方で、俳優がもっとこういうふうに活動してもいいんじゃないか、と思うこともありますね。
最近は、SNSに力を入れようとする俳優も多いですよね。ただ、これはあくまで個人的な意見ですが、SNSで何を発信するかによって、自分が何者なのか分からなくなってしまうことも、結構あるんじゃないかと思っています。
史織:
やっぱりああいう媒体って、「これだ」と思えるものをきちんと出していかないと、だんだんと方向が分からなくなっていく感覚がありますね。
気づいたら、何を伝えたいのか自分でも分からなくなって、「この人は結局何を発信したいんだろう?」と思われてしまうんじゃないかというのが怖い。
Shuya:
でも、正直SNSって今すごく重要じゃないですか?
史織:
そうですね。俳優としても重要だとは思います。
Shuya:
でも、俳優として何をしていったらいいのか…うーん…っていうところはすごく私自身も迷いますね。
史織:
確かに。
Shuya:
ただ待っているだけで日々を過ごすのは、やはりもどかしさがありますし、時間を持て余しているように感じることもあります。
だからこそ、「じゃあ、自分はどう動けばいいんだろう」と考えるようになりました。その問いかけは、今の俳優にとって、そしてこの業界で活動していくうえで、避けて通れないものなんじゃないかと感じています。
史織:
とても大事なことですよね。それこそ戦略を立てることも含めて。ただ、そこを全部ひとりでやるのはやっぱり難しい部分もあります。
誰かとタッグを組む、という選択もそうですし、客観的に見てくれる人と一緒に進んでいくほうが、方向性はずっと明確になる気がします。
自分を深堀るからこそ唯一が見えてくる
史織:
私は俳優を目指してる時点で、何かを表現したい人の集まりだと思ってて。
Shuya:
それは間違いないですね。
史織:
自分の中に譲れない信念?みたいなものや、私はこれをやるために俳優になったんだ!みたいなものって絶対何か一つあるような気がしてるから。
Shuya:
それって、誰にでもあることだと思うんです。有名になりたいとか、この作品に出たいとか、そういう気持ちは常にある。
でも、その一方で、本当に自分がやりたいことや、自分の中にある芸術的な衝動みたいなものが、そうした思いに覆い隠されてしまっている気がすることもあります。だからこそ、自分でもなかなか気づけなくなってしまうんですよね。
史織:
いやー、、特に目に見える「仕事」がないと見えなくなりがちですし、掘らないとそこって気づかないですよね。
Shuya:
掘り下げていかないと、やっぱり気づけない部分だと思いますし、そこに気づけた人が俳優のキャリアをウェルビーイングで生きているというか。
俳優というキャリアそのものを楽しめるんじゃないか、と思うことは結構あります。
史織:
それは私も思いますね。結局何がしたいのって聞かれた時に、はっきり「○○です!」って答えられる人は、強いなって。
Shuya:
そう。それはオーディションでも一緒じゃないですか? 「なんか、何でも作品に出たいです」というよりは「こういうビジョンを持ってて、こういう信念があって、こういう作品も作りたい。だから出演したいです」って言った方が絶対いいですよね。
史織:
そこまで言い切れるのは魅力的ですよね。そこで落ちたとしても、別の作品で一緒になりたいって思ってくれる人が、もしかしたら隠れてるかもしれないですしね。そこを言えるのと言えないのとではやっぱ違うかなって思います。
Shuya:
だとしたら「なぜ俳優をやりたいのか、やっているのか?」ということを考えるのはすごく大事なのでは?
史織:
そこについて最近考えているのですが、「あ、だからなんだ」と腑に落ちる瞬間が増えてきました。
だから私はこの考え方に行き着いた、だからこの作品が好きなんだ、だからこのセリフの一言に強く共感できるんだ、ということが一本の線でつながっていく感覚があります。とはいえ、自分自身も、まだそこを掘り切れていませんし、その問い自体がとても難しいものだとも感じています。
Shuya:
難しいですよね。
史織:
「結局どこに行き着くのか」というところまで突き詰めていくと、かなり深いところまで入り込んでしまいますし、そこがまた難しいところだと思います。
ただ、そこにたどり着けたときには、自分が自分のことをより理解できるようになって、その結果、発する言葉も変わってくるのではないかと感じています。
Shuya:
俳優として人前で話す場面で、自分の言葉としてはっきり伝えられるというのは、確かに大きいですね。
史織:
だから「具体的にする」ということが、今はすごく自分の中で生きている感覚があります。
Shuya:
台本と全く一緒じゃないですか!
史織:
でも、本当に 台本で「具体的にすること」を積み重ねてきたからだと思います。
誰かと一対一で話したときに、「すごく考えていますね」と言われるようになりました。以前は、そう言われることはほとんどなかったのですが。
特に、事務所を探してさまざまな方とお会いしていた時期に、そう言われることが増えたと気づきましたね。
これまでは、やりたいことはあるものの、すべてがとても曖昧で、自分の言葉を持てていなかったのだと思います。そのため、話しても、「ふーん。」としか思われてなかった。笑
Shuya:
台本もリアルな人生も繋がってますね!
史織:
だからこそ、今になって「あ、ここにも全部つながってくるのだな」と感じましたね。深く掘り下げるということは、何事にも大切なんですよね。


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