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ベルリン映画祭特別賞受賞作『雲と大地のはざまで』、6月27日よりユーロスペースほか全国順次公開
ペルーのアンデス山脈を舞台に、サッカーに夢を見る少年と、彼の暮らす村に迫る環境破壊の現実を描いた映画『雲と大地のはざまで』が、6月27日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開される。
2024年のベルリン映画祭ジェネレーションKPlus部門特別賞を皮切りに、リマ映画祭監督賞、シアトル国際映画祭最優秀作品賞など国際的な評価を重ね、2025年には第2回Cinema at Sea沖縄環太平洋国際映画祭で最優秀長編作品賞を受賞した話題作だ。
ワールドカップに憧れる8歳の少年が見つめる、アンデスの大地に迫る危機

物語の舞台は、標高4,000メートルを超えるアンデス山脈に囲まれたペルーの小さな村。アルパカの世話をして暮らす8歳の少年フェリシアーノには、幼いアルパカのロナウドと忠犬のランボーという二匹の友がいる。サッカーやペルー代表のワールドカップ予選について話しながら過ごす毎日は、一見すると単調で平穏なものだ。
しかしその裏では、村の暮らしを脅かす現実が静かに進行している。湖は汚染され、フェリシアーノの両親は採掘会社からの圧力に不安を抱えている。土地を手放すまいとする住民たちは団結し、抵抗の準備を進めていた。
そんな中、採掘会社からの脅しと思われる、アルパカを狙った凄惨な事件が起きる。姿を消したアルパカの群れの中には、フェリシアーノの友であるロナウドもいた。当局が住民の声に耳を貸さない中、フェリシアーノと村人たちは自分たちだけでこの危機に立ち向かっていく。
フェリシアーノが夢中になるサッカーは、ペルーの国民的スポーツだ。ペルーにとってワールドカップ出場は長年の悲願であり、36年ぶりの出場を決めた2018年大会では、出場決定の瞬間に地震観測所で揺れを感じるほどの熱狂に包まれたという。
劇中でフェリシアーノがラジオに耳を傾ける場面も、こうした国民的な熱狂を背景にしている。また本作には、アンデスの人々にとって守護精霊のような存在である”アウキ・タイタ”も登場する。人々が日々の生活の中で山に祈りを捧げ、自然と共に生きる姿が、物語の重要な背景として描かれている。
ケチュア語映画として描かれる、伝統文化の記録と現代社会の問題

近年、ペルーの公用語の一つであるケチュア語による映画製作が活発化しており、ペルーのアカデミー賞の代表作品に選出される作品も出てきている。単に製作言語がケチュア語であるというだけでなく、ケチュア語文化の伝統を記録し、現代社会が抱える問題を伝えようとする制作者の強い意志が、こうした作品群には共通して感じられる。
本作もその系譜にあり、アンデスの少年のピュアな物語にとどまらず、生活に息づく祈りと鉱山開発によるコミュニティの対立構造を見事に描いている。
監督を務めるのは、本作が長編2作目となるフランコ・ガルシア・ベセラ。

1977年生まれ、ペルー・クスコ出身で、長編デビュー作『Southern Winds』(2018年)はリマ映画祭で初上映され、ドミニカン・グローバル映画祭やシカゴ・ラティーノ映画祭などにも出品された。短編作品でも高い評価を受けており、『Indie』(2008年)でペルー短編映画賞、『Lima』(2011年)でペルー文化省最優秀短編映画賞および最優秀脚本賞を受賞している。
主人公フェリシアーノを演じたアルベルト・メルマは、公開オーディションとワークショップを経て選ばれた。母親役のネリー・ウアイタも一般公募のオーディションで抜擢された非職業俳優だ。監督は2人の起用について、フェリシアーノ役のアルベルトが実生活でも「ランボー」という名の犬と「アウサンガテ」という名のアルパカを飼っていたことに触れ、彼と動物たちの間にスクリーンの内外を問わない本物の絆があったことが、自然な名シーンを生んだと語っている。
監督が込めた思い――「自分の原点を知る大切さ」を見つめる旅

脚本を手にしたとき、フランコ・ガルシア・ベセラ監督はその世界観に深く共感したという。困難な状況にあっても夢の世界に生き、理想を追い求める姿が描かれていたことに惹かれ、物語に入り込むうちに、幼い頃クスコで過ごした自身の記憶がよみがえったと振り返る。
「岩と雲の間を歩きながら、大切な仲間と共に主人公の姿が浮かび上がり、自分のルーツを大切にしようという強い思いが伝わってきました」と監督は語っている。
ペルーが直面する課題について監督は、国家の存在が感じられない地域では自然資源が無責任に搾取され、沿岸部や高地、ジャングル地帯の農村が汚染にさらされていると指摘する。
公正な教育や医療への投資も不十分であり、若者たちが大都市へ移住する以外に未来を切り拓く方法がない現実があるという。
日本映画への思いも語っており、黒澤明、小津安二郎、スタジオジブリ、北野武、河瀨直美、濱口竜介ら日本の映画文化に強い影響を受けてきたと述べている。
人知を超えた圧倒的な自然と、それをルーツとして生きていく少年。本作は、その地の未来に希望はあるのかという問いを、静かに、しかし力強く投げかける作品だ。
【作品情報】
映画『雲と大地のはざまで』
(原題:RAÍZ/英題:THROUGH ROCKS AND CLOUDS)
ペルー、チリ / 2024年 / ケチュア語、スペイン語 / 83分 / 2.39:1
監督:フランコ・ガルシア・ベセラ
脚本:アンヌマリー・グンケル、アリシア・キスペ
撮影:ジョン・カラスコ
出演:アルベルト・メルマ、ネリー・ウアイタ、リチャード・タイペ
配給:ブエナワイカ
配給協力:フリック
提供:アクションジャパン
【受賞・上映歴】
2024年 ベルリン映画祭 ジェネレーションKPlus部門特別賞、イベロアメリカ映画部門審査員特別賞
2024年 リマ映画祭 監督賞
2024年 シアトル国際映画祭 最優秀作品賞
2024年 ロカルノ映画祭 正式上映
2025年 第2回Cinema at Sea沖縄環太平洋国際映画祭 最優秀長編作品賞
6月27日(土)~ ユーロスペースほか全国順次公開
公式サイト:https://www.buenawayka.info/raiz


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