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【前編】第2弾 Shuya×田所ちさ『俳優で稼げないのはプロじゃない、それは趣味?』
俳優と俳優同士が、台本なしで赤裸々に語り合う企画『Off Script Actors』。今回のゲストは俳優・田所ちささんをお迎えして、現代の俳優の在り方について赤裸々に語ってもらった。
俳優として20年以上のキャリアを積んできた田所さん。会話の中で紡がれる言葉の数々は、現代を生きる俳優に刺さる言葉ばかりだった。
ここまで俳優を続けられた要因は?
俳優に必要な考え方や在り方とは?
ぜひ、多くの俳優の参考にしてもらいたい。
稼げないのに俳優を続けているのは趣味なのか?
Shuya:
私の意見として、俳優というのは、さまざまな偏見もあって苦しい部分が多い世界だと思っています。生活も決して楽ではありませんし、「成功」とは何かも明確には分からない。
充実した俳優人生を送ること自体、非常に難しいことだと感じています。
アルバイトをしながらオーディションを受けて、落ちて、またバイトをして、また受ける。
そんな生活を何十年も続けるのかと考えると、「そうはしたくない」と思う人も少なくないのではないでしょうか。だからこそ、俳優としての生き方にはさまざまな方向性があってよいのではないかと思っています。
田所ちさ:
私の経歴としては、芸能界に入ってもう25年ほど経ちます。ただ、私の場合は一度就職してから始めたので、スタートは遅い方なんです。短大を卒業して、幼稚園の先生をしていましたよ。
Shuya:
そうなんですか!
田所ちさ:
ちゃんと社会人を経験しています。そこからしっかりお金を貯めて、声優から始めました。
Shuya:
声優から始まっていたんですね!
田所ちさ:
もともとは声優になりたかったんです。でも就職したのは幼稚園の先生でした。「3年はちゃんとやろう」と自分で決めて、担任の先生として3年間きちんと勤めました。
本当は、先生も役者も両方やりたかったんです。でも当時は反対されていて、なかなか両立はできませんでした。それでも幼稚園の先生という仕事もやりたい気持ちがあったので、まずはその道を選んだんです。
ただ、演じることへの思いはずっとありました。だったら「お金を貯めて、自分で動けるようになれば何も言われないだろう」と考えました。先生の給料で大きく貯まるわけではありませんが、やりたいことをどちらも諦めたくなかったんです。
Shuya:
親からの反対というのは、やはり「不安定だから」ということですよね。
田所ちさ:
俳優は、未来が見えない仕事だと思われていて。今は「俳優」という職業も広く認知されるようになりましたし、作品数も増えていますよね。
でも私が学生だった頃は、もっと先が見えなかった。映画に出られるのは本当に限られた人だけ、ドラマに出ている人もごく一部、というイメージでした。今のような配信サービスもなかったので、そもそも作品数自体が限られていたんです。
Shuya:
確かにそれは事実ではあるんですが、俳優をやっている私からすると、少し不思議というか「なぜそう思ってしまうのか」という感覚もありますね。子どもへの愛情があるからこそだとは思うんですが。
田所ちさ:
不思議な感じはしますよね。言い方が悪いですが、稼げるかというと、なかなか稼げないのが現実ですから。
Shuya:
そうですね(笑)。
田所ちさ:
でも、「稼げるけどやりたくない仕事をやるのか」という問いかけは大切だと思います。
Shuya:
確かに。ちなみに、声優を始めてからはどのような生活をされていたんですか?
田所ちさ:
活動して間もなく結婚したんです。20代の時に。夫が夢を応援してくれる人だったので、本当によかったと思っています。
Shuya:
それはいいですね!ということは、俳優活動はバランスをとりながら自由にやれていた感じでしょうか?
田所ちさ:
アルバイトをしながら、お芝居にかかるお金は自分で出すと決めて、生活費と表現活動のための費用はきちんと分けていました。
最初は声優を目指していたので、「ある年齢までにレギュラーが取れなかったらやめよう」と、自分の中で勝手に目標を立てていました。誰かに言われたわけではなく、自分で区切りを作っていたんです。
夫も応援してくれていましたし、後ろめたい思いをする必要はなかったはずなんです。でも、「稼げないのに続けているなら、それって趣味なんじゃない?」と友達に言われたりすると、やはり心に引っかかるものがありました。
Shuya:
それは苦しいですよね。
田所ちさ:
「稼いでいないなら趣味じゃないか」と言われると、言い返す言葉がなくなってしまうんです。だからこそ、「何歳までにレギュラーを取れなかったらやめる」と自分で決めました。自分なりの区切りを作ったんです。そしたら、見事にレギュラーを取ったんですよ。
Shuya:
すごいですね! 芸能界ではよく聞く話じゃないですか。「これを最後のオーディションにしようと決めたら受かった」というエピソード。
田所ちさ:
ありますよね。
Shuya:
だらだらと続けてしまうことも、一つの問題だと思っています。
アルバイトをしながら俳優をして、オーディションを受けて、たまに作品に出る。そんな日々をなんとなく重ねていく。もちろん、それ自体が悪いわけではないけれど、どこかで「やっている」という事実に満足してしまっている感覚もある。
なんとなく過ぎていく毎日を「これでいい」と思いながら過ごしている人も、結構多いんじゃないかと感じています。
田所ちさ:
確かに、それはそれで否定しません。でも、5年後、10年後を考えたときにどうなっていたいのか、ということは大事だと思うんです。なんとなく続けていても、毎日のように役が来ているなら、それはそれで素敵なことです。
でも、現実はなかなか難しい。だから結局は、その人自身が「どこを目指したいのか」「どうなりたいのか」だと思うんです。
Shuya:
「どうしたいか」はすごく大事だと思います。ただ、今は俳優を主体的にやりたいというよりも、「売れたい」という大きなくくりの中の一つとして俳優を選んでいる人も多いのかな、と感じています。
本気で「自分は俳優なんだ」というこだわりを持っている人が、少し減っているのではないかとも思うんです。
配信も増えて、数字を取ることや出演数を増やすことは、たしかに一つの手段です。
でも、俳優というのは本来もっとクリエイティブな仕事のはずで、表現そのものに向き合う姿勢を持っていてもいいのではないか、と思っています。
「俳優として責任を持てるのかどうか」を問う
田所ちさ:
そうなんですよね、だんだんとそうなってきたかもしれない。覚悟がどこで生まれたかも正直よく分からないけれど、30代の頃に「漠然と続けること」はやめた気がします。
Shuya:
そうなんですか。
田所ちさ:
舞台に立ってお金をもらったらプロなのか、席を埋めたらプロなのか。じゃあそれで食べていけるのか、と言われたら、食べていけるわけじゃないじゃないですか。
むしろマイナスになることもある。でも「お金をもらっているのがプロでしょ」とも言われる。そのもやもやが、30代の頃は特に多かったように思います。
Shuya:
プロの話で言うと、以前インタビューさせていただいた俳優さんが、「プロかどうかの境目はすごく難しい」とおっしゃっていて。そこで話したのは、「自分で覚悟を決めているかどうかがプロかどうかの基準なのではないか」ということでした。
田所ちさ:
でも、その通りだと思います。
例えばアルバイト先でも、「他にお仕事してますか?」と聞かれたときに、「俳優です」とはっきり言えるかどうか。
自分のやっていることが恥ずかしかったり、「やってるんですけど、そんなに出てなくて」と言い訳してしまうなら、やはりはっきりとは書けないと思う。別に書かなくてもいい、それはその人の判断です。
でも、「俳優です」という言葉に責任を持てるかどうか、ということだと思います。
Shuya:
「責任が持てるかどうか」という、自分の心の中の境目みたいなものって、ご自身の中にもありましたか?
田所ちさ:
あの、詳細はちょっと忘れてしまったんですけど、友人と話していて、「今日からお互いはっきり言い切ろう」と決めた瞬間があった気がします。
「俳優です」と言わなければ自分の人生に恥ずかしくなってしまうし、応援してくれている人たちにも失礼だと思って。何かの飲み会の帰りか打ち上げの後だったか、そこから「俳優」とはっきり書くようにしました。
Shuya:
それは大事なことかもしれないですね。
田所ちさ:
不思議と、そうなってから仕事が増えたんですよ。
Shuya:
僕はそれを信じていて、心の中の覚悟が、目の前に現れることがあると思っているので。
田所ちさ:
意識が変わると、見えるものも変わりますよね。絶対そうだと思います。
そして、そうやって自分で言葉にして、外からの影響を受けたり、書き続ける機会を積み重ねることで、さらに変わっていくものがあると思います。


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