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俳優コラム

第3回成原佑太郎コラム「お金じゃなかった」--舞台のプロデュースを通して見えたクラファンの本質と大切な心得

【English Version is here】
第3回コラム英語版はこちら!

前回のコラムでは「地道な積み重ねこそが、夢への大きな一歩」について書いた。逆算思考を使い、小さなワークショップから始めた話だ。

その後、僕は新たな問いに直面することになる。

作品を作るだけでなく、その挑戦を多くの人に応援してもらうには、どうすればいいのか?

今回のコラムでは、僕がカナダで初めてプロデュースした舞台『STAND』の制作を通じて、自分なりに試行錯誤して導き出した1つの答えを共有したい。

クラウドファンディングを立ち上げれば支援は集まるのか?

第3回成原佑太郎コラム

「ビザが切れる前に、ここバンクーバーで何か作品を作りたい」

当初抱いていた目標はいつの間にか、舞台『STAND』をプロデュースする話へと変わっていく。そしてすぐに直面したのが、資金の問題だ。

制作費は約$6,800(約78万円)。チケット価格には上限があり、手数料等を計算するとチケット収入だけでは到底賄えない。多くの自主制作では主催者が身銭を切る。当初の僕もそう考えていた。

しかし、ワーホリでカナダへ来ている以上は助成金や借入という選択肢は現実的ではない。

そして何より僕には「これを一度限りで終わらせるつもりはない」という思いがあった。

「これからも作品を作り続けたい」

一度の公演で再起不能になっては意味がないと思っている。そこで見えてきた一つの手段が、クラウドファンディングだ。

しかし、クラファンを立ち上げれば、自ずと支援は集まるのか?

その答えは明らかに「NO」だった。

支援者がプロジェクトに求めていたこととは?

第3回成原佑太郎コラム

僕自身、これまでいくつかのプロジェクトを支援してきた経験がある。応援する気持ちは本物だが、支援をするなかで「もったいないな」と感じることがあった

それは、『作品が完成したのか、映画祭の結果はどうだったのか——報告のないまま終わってしまうプロジェクト』だ。

また、リターンにオリジナルTシャツを用意しているプロジェクトも多いが、正直なところ「Tシャツが欲しくて支援したわけじゃない」という気持ちになることもある。

その30ドルからTシャツの制作費と送料を引いたら、実際に作品づくりに使える金額はいくらになるのか。支援したお金は、できるだけキャストや制作費に使ってほしいと思う。

「自分が心から応援したいプロジェクトの共通点は何か?」

たどり着いた答えはシンプルだ。

支援 = 応援。

支援者が本当に求めているのは「頑張れ!」という声援に誠実に応えてくれることではないか。透明性と誠実さ——それが「応援したい」という気持ちを生む。

クラファンで集めるべきものは、お金ではなく「信用」ではないだろうか。

自分が「応援される」人間になるためには?

第3回成原佑太郎コラム

では、自分が「応援される」人間になるためには?

答えは、派手なプロジェクト設計でも魅力的なリターンでもない。「日頃から目の前の人を大切にする」という、ごく当たり前のことだと思う。

『近道なんてない。日頃の積み重ねが全て』

実際に舞台『STNAD』で支援してくれた方々も、ほぼ全員が「今まで出会ってきた人、お世話になった人」だった。

日本からの支援者も含め、僕がどこかで繋がりのある人たちばかりである。

前回の記事でも触れたように、僕はバンクーバーに来てから積極的に人と会うようにしていた。小さなワークショップを開き、エキストラとして撮影現場に顔を出し、人手が足りなければ手伝い、友人のイベントには必ず足を運ぶ。

でも、いざ支援が必要になった時に頼れたのは、そうして出会ってきた人たちだけだ。

もちろん、しつこいと思われるくらい連絡をしていたので既読スルーやフォロー解除もある。「マジでうざいからもう連絡しないで」とブロックされることもあった。

心が挫けそうになる瞬間もあったが、それでも「頑張ってね!」と応援してくれる人がいる。

「俺が頭を下げないで、腹を括らないなら、いったい誰がやるんだ」

きっと「今日だけ」頑張っている姿を見ていたなら、応援してはくれなかっただろう。ずっと信念を持ち、絶対にやり遂げると決めて動き続けてきたからこそ、応援してくれる人がいた。

クールでスマートな戦略なんて、どこにもない。あったのは、泥臭くて誰も憧れないような、地道な積み重ねだけだ。

みなさん、本当にありがとうございました。

クラウドファンディングを経て得たもの

第3回成原佑太郎コラム

結果として、62人から約$3,200(約35万円)が集まった。決して大きな数字ではないかもしれないが、『62』という数字は、一人ひとりの顔が思い浮かぶ、僕にとっては重みのある数字だ。

僕は、このクラウドファンディングを通して集まったのは、決してお金だけじゃないと思っている。

『信用』も確実に積み上がったに違いない。

おかげでキャスト・クルーへのギャランティを公演前に支払い、黒字で終えることができた。これで僕の挑戦は、また続けられる形となった。

この「継続できる」という事実が、すごく大切だ。一度限りで身銭を切り崩し、終わったらまたお金を貯め直す——それは健全な挑戦とは言えない。

目の前の作品を丁寧に作ることは大前提だ。ただ、エンタメやアートは自己満足だけでも成立してしまう側面がある。「自分が好きだからやっているんだ」という言葉の裏で、悲しむ人がいることも事実。

だからこそ僕は、その責任から目を背けずにやっていきたい。

とはいえ、まだ1度やっただけ。次のプロジェクトこそが、本当の実力を問われる場になるだろう。

「応援される」人になるには、近道なんかない

今回の挑戦で、一つ確信したことがある。

確かにプロジェクトを遂行するにあたって、完璧なプレゼンや、魅力的なリターン設計はもちろん大切だ。しかし、それよりもっと大事にすべきことは『日頃から目の前の人を大切にする』というごく当たり前のことだ。

しかし、この『当たり前』には時間がかかる。

目先の結果だけを求めるなら『効率が悪い』と感じるかもしれないが、『日々の積み重ね』は、いざという時に『応援』という形で返ってくる。

結果、どんな挑戦においても『信用』が土台になる。その信用は一日では作れないし、近道もない。

今回僕が見つけたのは、近道を探さず、確実な道を歩き続ける自分だった。まだまだ、途中経過にすぎないがこれが僕が出した1つの答えだ。

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