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第2回成原佑太郎コラム『地道な積み重ねこそが、夢への大きな一歩』
何かを成し遂げたいと願うとき、僕たちはつい遠くの景色ばかりを見てしまう。
しかし本当に難しいのは、「いま何をするか」を決めることではないだろうか。
前回のコラム『Finding yourself is up to you』Vol.1では、「正解にするために動くだけだ」という考えを共有した。
だが、その直後に多くの人が立ち止まる。
「では、具体的に何から始めればいいのか?」という問いである。
目標はある。努力もしている。それでも、その行動が確実にゴールへ向かっているとは限らない。地図を持たずに歩き続けるような不安がつきまとう。
だからこそ必要なのが、「逆算思考」だ。
目標やゴールを先に定め、その将来の姿から逆方向に考えることで、いま取るべき一歩が明確になる。
今回の記事では、この逆算思考をどのように実践し、小さな一歩を具体的な行動へと落とし込んでいったのか、その過程について記していきたい。
逆算して選んだ「小さな集まり」
「ビザが切れる前に、ここバンクーバーで何か作品を作りたい」
これは、カナダに来てわりと早い段階から自分の中にあった目標だった。当初はショートフィルムを想定していたが、ただ形にできればよいというものではなかった。
そして、僕にはひとつ譲れない条件があった。
「全く知らない人同士で集まって作るんじゃなくて、これまでお世話になった人や、仲のいい人たちと作品を作りたい」
そこで自問したのが、以下の言葉だ。
「そもそも、今の自分には『一緒に作りたい人』ってどれくらいいるんだろう?」
この問いから、僕の逆算思考が始まった。
作品づくりの前に、まず取り組むべきことがあるのではないかと。
「それは、共に創作できる人と出会い、関係を築くこと。そして、志を同じくする人々が自然に集まれる場をつくること」
度々伝えているが、バンクーバーで感じていたのは、日本人の役者や映画関係者同士のつながりの希薄さである。
だからこそ「ゆるやかにでも顔を合わせられる場」が必要だと考えた。
結論はシンプルだった。
「だったら、自分で作ればいいんじゃないか?」
「作品を作る前に、一緒にやりたい人との関係を作ることが先なのでは?」
こうして僕は、まず小さなワークショップを開くことから始めることにした。
やってみて気づいた、無理せずできること
あるとき、自分のInstagramのストーリーで何気なく「英語が流暢じゃなくても、日本語で集まって何かできたらいい」と話したことがあった。
実は、それを見た映画監督の方から「演技のワークショップやってみる?」と声をかけていただいたのだ。
「そんな場が本当にあったら、自分が一番行きたい」
それならば、自分で企画し、自分もそこに立てばいい。そこで小さな願いを、形にしてみようと思った。
しかし、開催を決めたものの、何もしなければ人は集まらない。特別な宣伝はせず、SNSで一人ひとりに連絡を取り、実際に会った際にも直接声をかけた。
地道な作業だったが、不思議と負担には感じなかった。それは、自分自身が心から望んでいた場だったからだと思う。
もし、これが誰かから「やってくれ」と頼まれた仕事だったら嫌だったかもしれない。
しかし、自分が心から「こういう場があったらいいな」と思えるものだったからこそ行動に移せた。それは、講師をお願いしたときも同じだ。
そういった時は、いつも不安よりも先に、「嬉しい」「ありがたい」という感情が湧き起こる。
そして、僕はこの過程で密かに感じていたことがある。
「自分は、人に会いに行くことが向いているのかもしれない」
このワークショップに参加してくれた人たち同士が繋がって、『また今度、一緒に何かやろう』という話をしてくれたら——それが一番嬉しいなと、当時は思っていた。
結果的に、数回のワークショップを開催することができた。
「この前も楽しかったので、また来ました」「こういう場があって良かったです」——そんな言葉を、参加した人からもらえたことは、本当にありがたかった。
さらに興味深かったのは、参加者として来てくれた人が、「次は講師として手伝うよ」と言ってくれたことだ。
そして、この瞬間に気づいたことがある。
「自分が本当にやりたかったのは、『一度集まって終わり』のイベントじゃなくて、『また会いたいと思える場』を作ることなんだ」と。
そしてこの小さな経験が自然と、次のステップへの土台になっていた。
「地道な積み重ね」は、我慢して耐えるものじゃない
よく「地道な積み重ねが大事」と言われる。
しかし、実際にワークショップを開催して分かったのは、「地道なこと」というのは、本当は「頑張って耐えるもの」じゃないのかもしれないということだ。
個別DMを送ったり、1対1で「来てね」と声をかけたり、参加者が楽しめるように内容や進め方を考えたり…。
そういった一つひとつの作業は、外から見ると地味かもしれないが、僕にとってはそれが「苦じゃなく継続できる時間」だった。
特に好きだったのは、そこに集まった人たちが楽しそうに参加している姿を見ることだ。
ワークショップ後に、みんなで感想を言い合っている光景。
「またやってください」「次も参加したいです」という声。
そのような瞬間が嬉しくて、それが間違いなく僕のエネルギーになっていた。
僕がここまで継続して来られたのは「逆算思考」という考えがあったからに違いない。
もし『バンクーバーで何か作品を作りたい』だけを必死に考えていたら、何から手をつけていいか分からず、結局何もできなかったと思う。
この『逆算思考』がなければ、ワークショップという小さな一歩には辿り着けなかった。
「これを続けていけば、いつか大きな夢に繋がる」
その確信があったからこそ、地味な作業も迷わずに続けられたのだと思う。
どんなに論理的に正しい戦略でも、続けられなければ意味がない。
もしそれが「地味だけど、苦じゃなくやれる時間」で、終わった後に「またやりたいな」と思えるものであるなら——それはもう、立派な夢への一歩目なのではないだろうか。
僕にとってその一歩目は、「作品そのもの」ではなく、「みんなで集まれる、小さな場を作ること」だった。
あの時、その一歩を選んだ自分に対して、今の自分はちゃんとこう言える。
「派手じゃなかったけど、その選択は間違ってなかったよ」
この逆算思考と、小さな実験の積み重ねがあったからこそ、僕たちは一つの大きな挑戦に辿り着くことができた。
それが、300人を動員することになる『STAND』という舞台だった。
地道な積み重ねこそが、夢への大きな一歩になる。
この言葉の意味を、僕はこれから本当の意味で知ることになる。
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