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【単独】魅せた俳優としての強さ-映画『鍵』菅野恵インタビュー
これまで幾度となく映像化されてきた谷崎潤一郎の名作『鍵』。そんな名作を、いまおかしんじ監督が新たに映像化した本作が、7月10日より京都や大阪など関西エリアを中心に公開が始まる。主演は吹越満と菅野恵、さらに小出恵介が出演する。今回は、妻・郁子を演じた菅野恵さんに、役作りや作品への思い、これからのキャリアについてお話を伺った。
菅野恵が役として貫いた『前へ進むエネルギー』

–– 今作では、役として大胆でセンシティブな演技が求められた作品ではありましたが、出演が決まった時どのように感じましたか?
出演が決まったときは、素直に「やった!」という気持ちでした。また、脱衣シーンや性的な描写があることについては、オーディションの段階で事前に説明を受けていたので、特に戸惑いはありませんでした。それよりも気になっていたのは、実際の撮影がどのような手順で進むのかという部分です。
吹越満さんとお芝居ができることは純粋に楽しみでしたし、その後、小出恵介さんの出演も決まったと聞いて、活躍を拝見してきた俳優さんの出演が増えていくことにワクワクしていました。
–– 劇中、菅野さんと吹越さんの関係性がすごく自然な印象を受けました。年齢差がある中で、関係性を築く上で大事にしたことはありますか?
結果的には、年齢差を意識しなかったことが良かったのかもしれません。私は昔から、良くも悪くも図々しい、ふてぶてしいタイプだと言われることが多いので。「年齢が離れているからどう接しよう…」と考えることが、そもそもなかったのかもしれません。「年上の共演者」というより、「一人の人」として自然に接していました。
実際に舞台挨拶では、監督から「昔から知っている人同士みたいだった」と言っていただき、吹越さんにも「昔からの友達のような感覚だった」と話してくださいました。
自分では意識していませんでしたが、人との距離をあまり気にせず、自然と懐に入っていくところが、いい方向に働いたのかもしれません。

–– 撮影中、監督とのやり取りで、印象的なことはありますか?
印象に残っているのは、「このシーンはちゃんと成立している」と実感できた瞬間です。
ある撮影の際、監督がモニターを見ずに、現場でじっと芝居を見ていたことがありました。そして、カットをかけるタイミングを忘れてしまい、撮影後に「普通に見入っちゃったよ」とぽつりと話されたんです。
その言葉が、逆にとても嬉しくて。演技を「演技」としてではなく、一つの場面として自然に受け取ってもらえたんだと感じました。
あの瞬間、「この空気感の中で、しっかり芝居ができていたんだ」と実感できたことが、とても印象に残っています。
–– 郁子は、描写も含めてとても印象に残る人物でした。郁子を演じるうえで大切にした要素や、役作りで意識したことはありますか?
役作りをするうえで、郁子は「悲しみを悲しみのまま終わらせない人」として演じたいと思っていました。どんな状況でも、根底には明るさや前に進もうとするエネルギーを持っている人物、というのが私のイメージです。
そのため、生まれてから現在に至るまでの人生を、年表のように細かく書き出していきました。剣持(演:吹越満)や木村(演:小出恵介)とどのような関係を築き、どこですれ違い、なぜ今の状況に至ったのか――台本には描かれていない部分も含めて、自分の中でたくさんのエピソードを作り上げていきました。
自分の中で積み重ねてきた物語と、現場で実際に起きていること。その二つをうまく重ね合わせながら演じていた感覚があります。
どれほど悲しい場面であっても、郁子は感情を内に閉じ込めるのではなく、しっかりとエネルギーとして外へ放つ人でありたい。そんな思いを大切にしていました。

–– 郁子と自分自身、似ているなと思う部分はありますか? 菅野さんの雰囲気を見ていると、似ている部分があるかなとふと感じました。
台本に描かれている郁子の人物像と、私自身の感覚との間に大きなズレはなかったと思います。なので「このセリフは自分には言えない」と感じることもほとんどなく、無理に役を演じようとするのではなく、とても自然に作品の中へ入っていくことができました。
役を作るというよりも、自分自身の感覚をそのまま郁子に重ねていった、という感覚に近かったですね。
–– 俳優として、これからもっと長くキャリアを歩むなかで大事にしたいことや、どういう女優さんになりたいかなど、キャリアの歩み方についてビジョンはありますか?
大切にしているのは、「断らないこと」と「焦らないこと」だと思っています。
私はもともとせっかちな性格で、人と比べてしまうことも多いんです。一つの仕事が終わると、「次はどうしよう」「次が何も決まっていない」と、不安になって考え込んでしまうこともあります。
でも、そんな時に「大丈夫。今焦っても仕方ないよ」と声をかけてくれる人たちが周りにいてくれました。「絶対大丈夫だから」と言ってくれる存在がいることは、私にとって何よりの財産です。
だからこそ、その言葉を信じて、焦らず、いただいた仕事は断らず、出し惜しみせずに全力で向き合うことを大切にしています。
とはいえ、根っこの部分はかなり体育会系なんです(笑)。最後はどうしても根性論に行き着いてしまうところがあります。
焦ることはいくらでもありますが、自分一人の力だけでは絶対に乗り越えられません。だからこそ、周囲の人たちの支えを素直に受け入れながら、一歩ずつ進んでいきたいと思っています。

公開情報
映画『鍵』
脚本・監督:いまおかしんじ
脚本:松本稔
出演:吹越満、菅野恵、小出恵介、丸純子、那波隆史、佐倉萌、新藤まなみ、治田敦 ほか
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
◯関西の上映予定
7/10(金)〜アップリンク京都
7/11(土)〜シアターセブン、元町映画館
◯以下日程でいまおか監督登壇予定(時間未定)
7/11(土)アップリンク京都、シアターセブン、元町映画館
7/12(日)シアターセブン



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