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case.2『俳優として「売れる」という目標は、最高の燃料にも、最悪の毒にもなる』
俳優として活動する多くの人が、一度は『売れる』という言葉に飲み込まれた経験を持つのではないだろうか。
同期が仕事を掴んだと聞けば焦り、先輩のやり方を参考にしては壁にぶつかる。そうして気がつけば、誰かの人生の上をなぞろうとしている自分がいる。
『売れる』を目指すことは決して悪いことではないと思う。むしろ最高の言葉だ。しかし、あなたは一見素晴らしいこの言葉で『自分を苦しめてやいないか』?
本当に考えてほしいのは、
『あなたにとって売れることはどのような状態なのか?』
『あなたは今、どのゴールに向かって走っているのか?』
である。
今回は、俳優としてキャリアを歩む上で見失いやすい、ある根本的な問いについて書きたいと思う。
それは「あなたにしか歩めない人生の道がある」という、シンプルだが忘れやすい真実だ。
人生のゴールは人の数だけ存在する
俳優の世界では「売れる」という言葉が一種の共通ゴールのように機能しやすい。
まるでピラミッドの頂点に向かって、全員が同じ斜面を這い上がるかのように、競い合い、しのぎを削り、ときに協力し合いながら、その一点を目指す。
そういった空気の中に身を置いていると、いつしか「売れることが唯一の正解だ」という感覚が当たり前になっていく。
「売れること」を目標にするのは決して間違いではないと思う。だが、少し立ち止まって考えてみてほしい。
「売れる」とは、いったいどういう状態を指すのか。大河ドラマに出ることなのか。SNSのフォロワーが何万人を超えることなのか。それとも、自分が心から信じられる作品に出続けることなのか。
その答えは、人によってまったく異なるはずだ。
なぜなら、「売れている状態」の定義は、その人がこれまで形成してきた価値観や、何に喜びを感じるかという感覚によって、根本的に変わってくるからである。
にもかかわらず、多くの俳優が「業界での売れ方」という漠然とした一つのゴールを共有してしまい、自分にとって本当の意味での「売れている状態」を深く考えぬまま走り続けているケースは少なくない。
ゴールは一つではない。人の人生の数だけ、ゴールは存在する。
そのゴールを達成できるのもあなただけであり、そこに至るプロセスを謳歌できるのもあなただけだ。
誰かの成功談を参考にすることはできても、その人生をそっくりなぞることは絶対にできない。
同じ方法を試して同じ場所にたどり着けると思うなら、それはすでに自分のゴールを見失っているサインかもしれない。
比較する対象など、最初から存在しない
あなたにしかないゴールが存在し、あなたにしか歩めないプロセスがあるとするならば、比較する対象はそもそも存在しないということになる。
しかし現実には、他の俳優と自分を比べて消耗してしまう人が後を絶たない。
「あの人はもうドラマに出ている」
「あの人はフォロワーが多い」
「あの人は事務所が大きい」
そういった比較が積み重なるうちに、自分のペースや方向性を見失い、本来向かうべきゴールから遠ざかってしまう。
比べているその相手は、あなたとはまったく別の人生を、別のゴールに向かって歩んでいる。
それは優劣の問題ではなく、ただ「違う」という事実に過ぎない。
そうなったとき、できることはひとつしかない。自分のゴールに向かって、自分のペースで、やるべきことを一つずつ積み上げていくことだ。
そして、その道の途中で人と出会う。出会いとは、それぞれが自分の人生を歩む中での交差点であり、互いに異なる「国(人生の道)」を歩む者同士の交流だ。
「あなたはどんな人生を歩んでいるの?」
「私はこういう景色を見てきた」
と語り合える関係こそが、本当の意味での人との繋がりではないだろうか。
俳優としてのキャリアも、同じことだ。誰かの正解をなぞるのではなく、自分の人生軸を深く掘り下げ、自分だけのゴールを見定めること。
その先にこそ、あなただけの俳優人生が待っていると私は思っている。


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